第10回公判 論告・求刑

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公開資料なのでここに全文を公開する。

論 告 要 旨

わいせつ図画頒布

貴志元則



第1 本件漫画本「蜜室」のわいせつ性等について

 1 本件公訴事実は,当公判廷において,取調べ済みの関係各証拠により証明は十分である。しかるに、被告人・弁護人は、本件「蜜室」のわいせつ性を否定し、被告人に刑事責任を認めることはできない旨主張するので、以下これらの点について、検察官の意見を述べる。

 2 本件「蜜室」のわいせつ性について
 本件「蜜室」は、全編が144頁であり、「新ヒロイン」ほか8編から構成されているが、性器、性戯、性交の描写 部分が全体のほぼ3分の2を占めており、その分量と構成からしても「蜜室」が性行為の描写 白体を目的としていることはあまりにも明らかである。その性交性戯場面 等の描写の内容に立ち入ると、各編において、男女が次々に体位を変えて性交を繰り返してゆく様を具体的かつ詳細に描写 している上、その間に性交に密接するさまざまな口淫その他の性戯を織り交ぜ、また性交、性戯に伴う男女の表情、姿態の変化、性器の模様、興奮時における発生音、性液の状況等々に至るまで、極めて大胆な写 実的手法を用い、微に入り細をうがって克明に描写されている。そして、中でも殊に、「相思相愛」においては、男がSM嬢の女性に暴力を用い催淫剤を使用するなどして性交に及ぶ様子を、また「這いずりまわる」では、数名の男が女性を監禁しカッターナイフ様の凶器を使用するなどして次々に輪姦して陵辱するなどの様子をそれぞれ扇情的な筆致で生々しく露骨に描写 しており、ここでは女性が完全に男性の性的快楽の対象あるいは性の玩ろう物として描かれている。
 もっとも、本件「蜜室」は、男女の性器及びその周辺の描写部分に網掛けを施して一応修正がなされているが、網掛けの消しの程度が薄く、網掛けを通 して性器の描写を認識できる状態にあるため、かえってこれが性欲を刺激し、かき立てかねない描写 ともなっている。このように、本件「蜜室」は、全体を通じ、性行為を興味本位 に取り上げ、しかも露骨に描写しており、専ら読者の好色的興味に訴えるものと認められることから、「蜜室」が徒に性欲を刺激興奮させ、かつ、人間をしてその動物的存在の面 を明瞭に意識させるもので、普通人の正常な差恥心を害するものであり、'善良な性道徳観念に反するものであることは十分に認定し得るものである。

 3 被告人の故意について
 被告人は、本件「蜜室」がわいせつ図画に当たるとの認識はなかった旨の主張をするが、「蜜室」の描写 の内容はすでに述べたとおりであって、これが法の許容するものでないことは一見して明らかであり、被告人にわいせつ性の認識がなかったものとは到底解し難い。のみならず、被告人は、株式会社松文館の代表取締役として、「蜜室」を発行するに当たり、事前にその原稿を確認して、セリフの一部を修正し、網掛けの程度を50パーセントから40パーセントに変更することなどを同社編集局長高田浩一に指示していた上、製本された「蜜室」が同杜に納入された平成14年4月12目か翌13目には内容を閲覧していたことから、「蜜室」の出版に先立ち内容を予め確定的に認識していたことは明白であり、しかも、頒布・販売目的から「蜜室」を出版し、これが各取次店に搬送されたことも認識していたのであるから、わいせつの故意に欠けるところはない。



第2 弁護人・被告人め主張に対する反論

 1 弁護人・被告人は、近時、社会の性解放の風潮が進み、わいせつ概念が変遷を挙げ、本件「蜜室」はすでにわいせつ概念に当てはまらない旨主張し、「密室」を弁護人提出にかかる多数のいわゆる成人コミック雑誌等の内容と対比して、「蜜室」はわいせつ性を欠くと主張するもののようであるが、弁護人提出の同成人コミック雑誌等は、本件「蜜室」と比較するとわいせつ性の程度が相当劣るものである上、不検挙、不起訴がそのまま取締当局においてわいせつ性がないと判定したことになるものでないことは当然のことであり、ましてや、これらの成人コミック雑誌類が巷に流布されている状況ないし事実とわいせつ性の判断の基準となる社会通 念が一致するものでないことは、これまた至極当然のことであり、弁護人の上記のような主張には理由がない。

 2 次に、弁護人らは、本件「蜜室」は文芸作品でわいせつ性とは別異の次元に属すると主張するもののようであるが、その描写 の流れや構成に芸術性は全く認められないのみか、性行為を興味本位 に露骨に描写していて、被告人の売らんがための思考しかなく、そこに思想・芸術性は全く認められない。



第3 情状について

  1 本件は、成人コミック雑誌を発行する出版杜の経営責任者である被告人が、共犯者である編集局長及び同漫画家と共謀の上、取次店16杜に対し、男女の性交性戯場面 等を露骨に描写した漫画を印刷掲載したわいせつ図画である漫画本「蜜室」2万544冊を頒布したという事案である。
 被告人は、性行為を興味本位に取り上げ、男女が性交等に及ぶ様子を扇情的な筆致で生々しく露骨に描写 し、専ら読者の好色的興味に訴える内容のものを意図的に大量に出版・頒布したものであり、誠に悪質である。そして、その頒布数は2万冊を超える大規模なものであり、しかも、「蜜室」は、本件起訴当時、すでに約2万冊が一般 の書店を通じて販売されており、被告人は、これにより、自己及びその親族が経営する会社に約977万円余りを利得せしめていたものであって、犯行による収益も多額にのぼる。さらに、被告人は、その供述するところによれば、女性を性の奴隷として調教する様子を刺激的に描いた作品を作ろうなどと考え、男性に如何にすればより多くの性的快楽を与えられるかを目指して作品化に取り組んできたことがうかがえ、これまでにも本件と同種漫画本を数多く出版し、マスコミ等を通 じて同様のわいせつな漫画本の出版・販売を積極的に助長してきたものと認められるから、本件は、被告人のかかる職業的、常習的犯行の一部であることは明らかである。加えて、その動機も、利益追求のためであり、短絡的、かつ、利欲的であって、酌量 の余地はない。

 2 被告人は、「蜜室」がわいせつ図画に当たるとの認識はなかった旨繰り返し主張して、現行憲法を頂点とする現行法秩序を無視した態度に終始し、わいせつ事犯の取締りに従事している関係当局を非難するのに急で、自らの態度を反省する姿勢が全く見受けられず、改俊の情は皆無である。

 3 被告人は、前記のとおり2万冊を超える大量の漫画本「蜜室」を、その発行責任者として、各取次店に頒布することにより、杜会の健全な性秩序・性風俗を侵害し、一般 人の性感情をないがしろにしたものであり、本件が社会に及ぼした悪影響は計り知れない。

 4 そして、また、本件の如き漫画が巷にあって社会訓練を経ていない多くの青少年を害することは、つとに吾人の知るところである。これら青少年は「密室」の如き漫画本にその性欲を刺激され、その発露を性犯罪に求めかねないのであり、社会訓練を経ていない青少年に対して与える悪影響も計り知れないものがある。ところで、弁護人らは、一般 の書店では「蜜室」を18歳未満の者には販売しないような対応をしており、読者層は18歳以上に限定されるため、18歳未満の青少年を害するようなことはないと主張するもののようであるが、そもそも書店における年齢確認がどの程度徹底して行われているかはわからない上、仮に書店で18歳未満の青少年には売らないという場合でも、一度18歳以上の読者に販売された後は社会に流通 し、これが18歳未満の青少年の手元に渡らないという保障は全くなく、これによって多くの青少年が性欲を刺激され、その発露を性犯罪に求めることになりかねないのであるから、弁護人らの主張は失当である。



第4 求刑

よって、相当法条適用の上、被告人を
懲役1年
に処するのを相当と思料する。





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※尚、このレポートはメモ及び記憶を元に作成されており、あくまで公判のイメージを伝えるためのものですので、多少の記述の食い違いは御容赦ください。
※転載は自由です。
※制作は児ポ法改悪阻止青環法粉砕実行委員会が行なっています。 また、制作に当たり匿名の方の協力をいただきました。



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